1973-'74 A Time for Action
地区ガバナー 小田成就
President ROTARY INTERNATIONAL William C. Carter
◆ “今こそ行動のとき”
ウィリアム・C・カーターRI会長は、年頭にあたり次のように要請されました。
昨年度「もう一度見直そう」をテーマにしてお互いに研究したわれわれは、みなあるいくつかの真実を悟ったのであります。そこで今年は「今こそ行動のとき」をテーマに私に協力下さるよう皆さんにお願いいたします。
まずわれわれの悟った真実を次の4つの方法によって行動に移そうではありませんか。
◇クラブ会員としての質の向上をはかる
今年度は同僚会員が助け合い、その潜在力を十分に発揮して、より充実した豊かな人生を送るように真剣に努力する。
◇職業人としての質の向上をはかる
あなたの同業者に、なによりも完璧なサービスやよい製品の提供を最優先するよう説得するために最善の努力を注ぐ、正当な報いはおのずから伴うものとして。
◇社会人としての質の向上をはかる
孤独に悩む若者や老人の要望するものを見極めてそれを充たす。住むため、働くための環境をよりよくすることを、市やその他の当局と図りできればその実行に協力する。
◇国際人としての質の向上をはかる
あらゆる困難を排して、世界中のロータリアンと、ロータリー独特の交信によるつながりを維持する。そして援助を必要とする人々を慰問し、救済する。
皆さん お互いの間を隔てるものを捜さないで、われわれが共通に持っているものを捜し求めようではありませんか。
◆ 年間基本方針
ガバナーとして私は日本の社会の現状を鑑み、この際諸奉仕活動の発動源として「人の心の温かさを取り戻す運動」に特別のご配慮を得たい。
今から68年前の1905年2月23日にシカゴ市出ポール・ハリス氏が中心となり他の3人の人々と共にロータリー・クラブを創立。この頃のシカゴ市は1871年に蒙った大火の傷跡も未だ癒えず、さらに万国博覧会後の惨憺たる恐慌に打ひしがれ、街は悪臭が鼻をつき、シカゴ川には濁水があふれ、市民は自分の利益追求のみに心を奪われ他人の事など考える余裕もなく、犯罪が横行してシカゴ市は「悪徳腐敗の街」として世界中に宣伝されました。
そうした時代に今日の親睦と奉仕を基調とするロータリー精神をもつロータリー・クラブが創設されました。
昨今の我が国の実情を見ますとき、残念ながら当時のシカゴ市の状況と相似た点が多々ある様に思われてなりません。現在日本人の懐は、非常に温かくなりましたが、それに反比例して、人の心は次第に冷たく、他人に対する思いやりの心は影をひそめつつある様に思われます。そこで私は、今日我が国で最も急務する所は、先ず「人の心の温かさを取り戻す」ことにあると信じます。
温かい心のロータリアンによるクラブ運営は必ずうまく参るでしょう。
温かい心のロータリアンによる社会奉仕は必ず温かい地域社会を作ることができるでしょう。
温かい心のロータリアンによる職業奉仕には従業員、取引先なども必ずこれに応えるでしょう。
温かい心のロータリアンによる国際奉仕は広く国外に多くの生涯の友を得ることが出来ましょう。
どうか各職業から選ばれたロータリアンの皆様方「人の心の温かさを取り戻す」ことにも大いに意を用いて一致協力し日本人の心に温かい心が蘇る様に努めて戴くことを期待致します。
◆ 意義ある業績賞
本年度はRIの「意義ある業績賞」が中止になりましたので、同地区委員会のお奨めもあって、本年度に限り地区ガバナー特別表彰を行なう措置をとりました。
1)大和高田RCの「今様おかげまいり」
2)京都北RCの米山奨学生に対する「心の暖かい援助活動」
◆ 米山奨学委員会の設置
米山財団の事業も、時節柄益々重要性が痛感されましたので、同財団の要請に従って本年度から地区に5名から成る「米山奨学委員会」を新設。ICGFの各プログラムに米山財団に関する時間を特設して、その理解と認識につとめました。おかげでこれに対するクラブ並びに個人寄付の成績も急速に改善され、最近の物価高に悩むアジア留学生の苦しみを緩和するのに役立っています。
◆ クラブの拡大について
9月に京都洛北RCが誕生。その後滋賀県八日市付近と奈良県桜井市に対し提唱。五月に八日市RCの二橋貞治郎元会長及び奈良RCの緒方準一パストガバナーに「ガバナー特別代表」をお願いして結成準備を取り進めております。
◆ ロータリー財団による活動の強化
各クラブで国際奉仕の一端としてクラブ並びにロータリアン個人のご協力を訴えたところ、今年度内1,000ドル寄付、6月までにRCから納入通知のあった方98名、未通知の方3名で合計101名。また1,500%達成感謝牌受領クラブ6RCに上り、地区もまたロータリー財団700%地区に列せられた。
私は次々と送られてくるポール・ハリス・フェロー・メダルや感謝牌を携えて、その受領者のクラブを再度訪問。例会の席上で栄誉をご祝福申し上げ、感謝の意を表して、伝達いたしました。
◆ 世界社会奉仕事業
下記両事業実施の為、地区内各RC委員長のご参集を得て、各RC会員1人1,000円の特別寄付方のご賛同を得た。
1)西アフリカ地方の干ばつ飢餓救済
国連広報センターを通じて180万円を贈る。
2)インド学童へ鉛筆寄贈
三菱鉛筆株式会社及び外務省の協力により、鉛筆50,000本に「ROTARY INTERNATIONAL. 365 DISTRICT」の刻印をして12,000本をカルカッタ日本総領事館へ発送。残る38,000本は大石世界社会奉仕委員が携行してカルカッタへ。インド文部大臣、駐カルカッタ日本総領事のご臨席を得て、親しく学童達各小学校代表の校長方個々に鉛筆を手渡し、身を以てするロータリー奉仕の良きモデルを示していただきました。
◆ 任期を終るにあたり
今、私のガバナー事務所に「時不待人」の色紙が掲げてあります。京都南禅寺管長 紫山全慶大師の筆に成り、福知山RC船越会長から御恵送いただいたものです。はや1年の月日を経過し全く夢の様で「時不待人」の感を深くしております。あらゆる方面のロータリアンから私に与えられた暖かい友情と、心からなるご協力並びにご支援の数々は一つ一つ走馬灯の様に今私の脳裏に去来いたしております。
カーターRI会長の「今こそ行動のとき」のターゲットを下敷きに日本の現状を考えあわせて「人の心の温かさを取り戻そう」と言う私の標語を積み重ねて、各クラブに対する公式訪問をはじめ既存41クラブは昨年11月中に済ませ、新設3クラブは本年2月に特別公式訪問をいたしまして、幸いに全部終る事が出来ました。
いずれのクラブも良くやっていただいており大変なご歓迎とご協力を受け多くの知己を得ることが出来内心幸福感に充ち溢れておりました。にもかかわらず月信に「公式訪問管見」をもって敢えてそれを言わず、至らざるを責めました。心ない業とお受取りいただいた方もあるかと思いますが、これもガバナーとしてロータリーを思い各クラブの向上発展を希っての事でありましたので、その点よろしくご理解の上、重々ご諒恕下さる様お願い致します。
◆◆ ガバナーのプロフィール
『境遇安住』の士
杉山嘉一
古都奈良に、奈良RCが呱々の声をあげたのは、昭和27年春3月である。東大在学中に司法・行政両高文をパスした眉目秀麗の英才小田君が、社会人として第一歩を印されたのは、大正14年、奈良県属としてであった。爾来星霜20年、官選最後の奈良県知事として、終戦後のむずかしい処理を一手に引き受けられたのも、奇しくも小田君である。
奈良RC設立の年、弁護士として入会。昭和31年国際ロータリーの機関誌 The Rotarian が代表的日本人を選ぶに当たり、広く全国ロータリアンの中より小田君を選び、同誌に "A family of Japan"(日本の家族)の題名で8頁にわたり紹介されたことは古いロータリアンなら記憶に残っていることと思う。
君は、その高邁な見識と豊富な経験と、生来の真摯な態度と努力とによって、逐年衆望とみに高くなった。特に昭和26年、公平委員制度が創設されるや、奈良市公平委員長として、また全国連合会会長として拾有五年の永きにわたった。
過去幾多の千変万化の人生行路の経験から、人の運命は自分の力では如何ともできるものではなく、すべて天の命ずるところであり、いかなる職や地位についても、その境遇に安住して最善の努力を積むことが、我々人間の義務だと「境遇安住」の四字を座右の銘としておられる。白髪端麗な容姿となられた今日、ロータリーのガバナーとしての風格、正に申し分なしと言うべきであろう。