1975-'76 To Dignity the Human Bening
地区ガバナー 
千 宗室
President ROTARY INTERNATIONAL Ernesto Imbassahy de Mello


 “人間に威信を”
 インバッサイ・デ・メロ会長は年度ターゲットとプログラムに関して大略つぎのような項目を示している。
  1活動的かつ友好的であること
  2実業人または専門職業人としての活動を捧げること
  3地域社会のための仕事とサービスに協力すること
  4人間として品位ある将来を期待し得るようにつとめること
  5国民として、自国のために貢献すること
1975-'76年度の活動はこのような趣旨の下でなされた。

 年度内の大きな行事
国際会長デ・メロご夫妻の来京
 インバッサイ・デ・メロRI会長ご夫妻を京都にお迎えすることができて何よりのことでした。1カ月余の準備期間しかなく、ガバナー事務所の小谷幹事長はじめ、各幹事や地元の京都クラブにいろいろとご迷惑をおかけしました。4月に挙行される地区大会のミニチュア版のような催しでしたが、国際会議場というユニークな建物、そして環境の良い宝ケ池の自然の美しさがあいまって、その催しの内容を高めてくれたのでした。
 
 年次大会に三笠宮殿下をお迎えして
 桜花も爛漫と咲き、鳥うたう陽春の4月2、3日の両日にわたり、京都岡崎の京都会館と勧業会館(友愛の家、その他の催場)において京都北RCのホストにより、地区の年次大会が開催されました。幸いにも天候に恵まれ、参加された地区内外のロータリアンとそのご家族は、京の春を充分に満喫していただいたことと存じます。地区年次大会は年に1度の地区における最大の行事であり、地区内クラブの団結とロータリアンおよびご家族相互の心のふれ合いを図ることによって、より良き奉仕への道をともに歩むことの意義を見つめ直し、地域社会に直結すべきロータリーの精神を高揚する場でなければならないのです。こうした内容を整えるためには、ホストクラブがその責にあたることは当然ですが、ホストクラブのみに任せてあとはお客でよいなどと思われるロータリアンは一人もないと存じますが、各ロータリアン一人一人がそのホストになったつもりでともに仕え合っていただくべきであります。
 三笠宮殿下には、妃殿下ともどものご台臨を賜り、快く特別記念講演をお引き受け下さいました。非常に蘊蓄のある感銘深きお話を承ることができました。
 大会2日目の特別講演者戸塚文子女史の幅広い世界観によるお話も素晴しく、よくこうした内容のある立派な講演を聞かしていただいたと、参加者よりお礼のお手紙を沢山いただいております。
 舩橋求己京都市長はじめ関係各位には、公務ご多端のおりから京都市あげてこの大会に積極的にご協力を賜りました。これはロータリー活動が地域社会によりよき浸透をしていることの、そしてそれが認められていることのあかしとして私の最も喜びといたすところで、心より御礼申し上げます。

 1年をかえりみて
 本年の1年をかえりみますと、あまりにも月日のたつのが早いのでガバナーとして十分にその職責が果たし得たかどうか甚だ忸怩(じくじ)たるものを感じております。インバッサイ・デ・メロ会長の「人間の威信を!」のターゲットに「共に仕え合って豊かな心を」という私のターゲットをあわせて、ロータリーの理想と精神の高揚のために、地域社会を中心に、とにかくあらゆる面に行動をもって示すことができましたことは、各クラブ会長、幹事並びにロータリアンの皆様のご協力があったればこそと感謝しております。
 先輩ロータリアンが切りひらき築きあげられたロータリーの良き道を、今私どもが歩ませて貰っているのですが、いたずらに安逸をむさぼったり、あるいはただやみくもに突っ走っているだけというようなロータリーでは困るのです。
 基礎の固まったこの道を、どのように利用すればより素晴しい地域社会が生まれ、人と人との良き関係が大きな輪となっていくかを研究しなければなりません。そのためには年に1回持たれる地区のいろいろな催しに、積極的参加をしていただくことがロータリアンのつとめであることを認識されればいいのです。地区の催しに参加される地区内ロータリアンの出席率は年ごとに増え、今年は80%を上回る平均出席率が出ています。
 これを見ましても、365地区のロータリー活動と実践は素晴しいものがあります。もともと仕え合って生きていくことの幸せを知る人間でなければならないのに、人間同士の不信感やチグハグな関係が、今日の人間の生き方を歪めています。ロータリアンは、正しく自己を見つめ、相手を見つめ、心を修め、その職業を通じて社会環境を少しでも良くしていこうという努力をするために、ロータリアンとなっていることを忘れないでほしいのです。
 今年は、こうしたロータリーの精神に少しでも直結するための心の開発を中心に、いろいろな活動を皆さん方にお願いしたいのです。
 公式訪問も従来の形式をかえてフリートーキングをこころみ、その中から、そのクラブの内容を身近に認識できたことは、ロータリーの組織における今後の諸問題とも結び合わせて考えさせられるものがありました。
 私はもともと地区内におけるエクステンションについては、むやみやたらの拡大よりも実質的な質と量の安定をはかるという意見を通してきたのです。
 そうした立場に立って、随分と調査研究を重ねられた吉田忠地区エクステンション委員長のご努力に感謝を致しています。その結果、中川一夫特別代表により長浜東、杉原孝太郎特別代表により京都西北、塩路永二特別代表により京都紫野、間中定泉特別代表により生駒という4クラブが新設され、すでに6月24日に創立された奈良桜井クラブを加えて5クラブが新たに国際ロータリーから認証されました。
 会員数におきましても今期は約330名の増加となり、クラブ数も会員数も無理なく順調なエキステンションができたことは、誠に喜ばしいことです。また、ロータリー財団に対する寄与率も誠に顕著な伸びを示し、1,200%地区の資格を達成、会員1人当たりの平均寄付額は約73ドルとなりました。
 次年度は私もマンチェスターRI会長より第359、366、367、370、373の5地区の「地区ロータリー情報研究会」のカウンセラーを任命されました。全く光栄に存じております。

 ガバナー当時を回顧して
 私がガバナーをお受けした1975‐'76年は、まだ日本全国21地区で今の3分の2の規模であり、ガバナーに出られる方も皆、年配でロータリー歴の永い社会的にも功成り名遂げられたという人が多かったのです。
 京都クラブの大先輩でパストガバナーであった絹川清さんや吉田忠さん、大倉治一さんなどからガバナーを受けてほしいと頼まれ、その時3つのことを言われました。
 第1に、健康診断を受けて下さいとのことでした。あなたは若いから大丈夫とは思うが、ガバナーの任務は1年以上ハードな情況におかれるので健康万全の状態であること。
 第2に、若くしてガバナーを受けられるのは、いろいろ難しい問題も出てくると思うが、ガバナーの役職は年齢を越えた存在であるので、若いからと遠慮せずにやりなさい。
 第3に、ガバナーは公平無私が信条でなければならない。ロータリーの場のみならず全ての場面においてこれを貫いてください。
ということで、この忠告を守り、ガバナーの任務をつとめました。
 それぞれのイベントが先輩パストガバナーのご指導のもと、小谷隆一幹事長をはじめ、地区幹事各位のご努力、そして何よりも自クラブである京都RC全会員のご協力によりつつがなく実施できましたことは、大きな感謝であり、喜びでありました。私は、この時ガバナーを勤めさせていただいてから、RI関係の諸種の委員や委員長、国内外の多くの地区での会長代理などロータリーに深く関わることとなり、1988‐'90年には国際ロータリー理事をお受けし、2年間勤めさせていただきました。
 そして、今年('98年)7月からロータリー財団の管理委員(トラスティ)をお受けすることになりました。
 しかし、昨今の世界不況の中で、いろいろな問題が出はじめています。本来はこのような時にこそロータリーが“友情と奉仕の心”を発揮し、地域の活性化に努めなければならないのではないでしょうか。
 この時代、もう一度“超我の奉仕”の原点に戻ってロータリーのあるべき姿を見つめたいものです。

 ガバナーのプロフフィール
奉仕に徹する国際人
吉田 忠

 千宗室君は、人も知る茶道裏千家15世家元である。私との交際は若宗匠時代からで、随分古い。私が昭和11年京都RCに入会した時、御尊父宗室氏は既に会員であり、高潔な人格者として会員から尊敬されていた。
 君のロータリー歴は昭和29年京都南RCに入会の時より始まり、クラブ要職の後、昭和40年私らの京都RCに迎えられた。和を主義とし、奉仕の念篤く、多くの会員から敬慕され、会長はもとより、理事、役員もたびたび務められた。
 常に国の内外を問わず、東奔西走、その忙中を割いて、幾多の奉仕活動に尽力されることは敬服のいたりである。ロータリー以外の奉仕活動も数多く枚挙にいとまがない。
 君は元海軍中尉である。海軍飛行予備学生として昭和18年学徒出陣された。また夙くより大徳寺の後藤老師について禅を修得し、仏道に帰依して住職の資格も有しておられる。
 君は奉仕に徹する国際人である。52歳のガバナーは当地区では空前である。まことにモデル・ロータリアンであり最適のガバナーと思う。君の就任によって、当地区に大きな光彩を放つことは信じて疑わぬ。