1978-'79 Reach out !
地区ガバナー 
杉山嘉一
President ROTARY INTERNATIONAL Clem Renouf


 “手をさし伸べよう”
 世界の近い将来がどうなるかは、他人のことに関心をもち、他人のために奉仕し、他人に向かって手を差し伸べる人々の手中にあります。ロータリアンとは奉仕のためにもろ手を広げている人々、他人の生活を豊かにするために喜んでその手をさし伸べようとする人々のことであります。
 ロータリアンは、奉仕の道を切り拓く開拓者として、この75年の間、単にロータリー・クラブの会員であるというだけでなく、会員をまことのロータリアンとする実践行動によって、奉仕の冒険に果敢に挑んで来たのであります。この「行動する」ロータリアンは、未来の形成に寄与する自らの力を信じて、人間の必要とするものを満たそうと、その手をさしのべるのであります。
 超我の奉仕ということは、ありふれた理念ではありません。同情、友情、理解といったものに乏しい世界にあっては、奉仕という理念はまれにみる貴重なものであって、われわれがそのために時間と能力を費やし、そのために自分のすべてを捧げるだけの価値あるものであります。

 年間基本方針
 私は小学校時代を大正年間に過ごしました。その時代の衣食住は大変つつましいもので、お米は食事のたびに大切にするよう躾けられたものです。粗末にすると「目がつぶれますよ」と言われたものです。衣服なども、古着やツギの当たったもので、それは織物を大切にする心、作った人に対する感謝の心です。現在「消費は美徳なり」といい、また「使い捨て」といった言葉は正に神を恐れざるものと言わねばなりません。思えば私達の職業以外の物は全て他の職業の人達のお世話になっています。毎日の生活が全て他人様のお世話になり、お陰をうけています。
 したがってこの計り知れない奉仕の御恩に対して我々は感謝をしなければならないし、そのお返しをしなければならないのです。
 パストガバナーの小田成就さんは「人の心に温かさを」といわれ、同じく千宗室さんは「ともに仕え合って豊かな心を」と申されました。
 これからの1年間は、会員お互いが助け合い励まし合って、朗らかに明るく、躊躇することなく大胆に、奉仕の手を差し伸べようではありませんか。それが本当のロータリアンです。

 年間重点事項
 職域で従業員、顧客、同僚、供給業者など、周囲の関係者にロータリーの奉仕の理想を伝えよう。仲間のロータリアンに、自分の職業上の高い道徳的目標を示そう。職業指導その他のプログラムを通じて、若者達が、終生、有意義な仕事をやり抜き、市民として立派にその責任を果たしていけるように、準備をさせよう。
 新しい会員に友情の手を差し伸べよう。そして「行動する」ロータリアンとなるようにその人たちを励まし、力づけよう。会員に推薦したいと思っている人たちに、自分のロータリーに対する熱意を伝え、われわれの「奉仕の冒険」に加わるよう勧めよう。
 街に出て自分の地域社会で対策に迫られている問題があれば、その解決に当たろう。老人には理解と関心を、青少年には指導と激励を。インターアクト、ローターアクト、RYLAによって、若い人達が奉仕に参加できる機会を与えよう。
 広く世界で人と人とがじかに接触して互いに理解しあい、信頼しあえるような環境をつくりだし、ロータリー財団、青少年の交換、組み合わせ地区およびクラブ・プログラム、ならびに世界社会奉仕を通じて、あらゆる国の人々に手をさし伸べよう。

 公式訪問中に感じたこと
 クラブに所属する地域社会の差、およびメンバー数の大小、メンバーの資質の差などにより、ロータリー活動の格差のあることは、当然のことだと思いますし、担当委員の努力により大いに格差を縮小することが出来ると思います。
 格差を縮小する一方法として、それぞれのクラブの委員会は、他のクラブの委員会との意見の交流をすること。すなわち他との横の連絡を密にもつことです。ともすれば我がクラブは、一応完成し、伝統のあるクラブだからと信じ切っている場合とか、委員会活動を活発にする積極的な気力もなく、ただ惰性で動いている場合があります。
 交流するクラブ数は多いほど自分が啓発されることが計り知れず多くなります。一番手っ取り早い進歩改善策を掴むコツを申し上げるならば、一日も早く、他のクラブの同じ委員会の方々と膝を交えファイアサイド・ミーティングのようなものをもって、懇談されることです、必ず大きな収穫が得られるにちがいありません。

 創立75周年記念事業
 創立75周年は、全ロータリアンにとって一般社会のロータリーについての認識を深めると同時に、クラブ会員自身が奉仕の自覚を刷新する各種プログラムや活動、事業を行なう機会となりました。

 ロータリーの国際活動
 国際ロータリー理事会では、保健、飢餓追放、人間性尊重のプログラム(3-H)があり、これに関して理事会は、各種の決議を記録いたしました。理事会では、保健、飢餓追放、人間性尊重プログラムの目的を示すものとして、下記の声明文を採択いたしました。
 国際ロータリーの保健、飢餓追放、人間性尊重プログラムの目的は、国際理解、親善、および平和を増進する手段として、すべての人々の健康を増進させ、飢餓の苦しみを緩和させ、かつ、人間らしい発展と社会的な発展とを促進させようとするものである。
 この目的を達成させるために、各ロータリー・クラブと個々のロータリアンは、次の分野における諸事業に取り組み、人々への思いやりの精神を実証するように奨励する。
 1)保健事業――人々の廃疾を防止しもしくは減少させ、かつ、精神的、身体的な幸福を増進させる活動
 2)飢餓追放事業――食料生産の増加をはかり、その配分を改善し、かつ、栄養の水準を向上させる活動
 3)人間性尊重の事業――人間生活における教育、社会福祉、文化、環境、職業および精神面の質的な向上をもたらせる活動
 保健、飢餓追放、および人間尊重プログラムを推進するために、75周年記念基金への寄付の奨励を呼びかけ皆様から多大のと支援を戴いたのであります。

 国際奉仕によせて――75周年記念事業の実践の中で
  ◎記念基金 クラブ単位として1,500ドルの寄付をすることになりました。
  ◎記念事業 RIでは3-Hすなわち保健、飢餓追放、人間性尊重の諸問題についての事業推進の実践状況を紹介します。
 フィリピンで保健、飢餓追放、人間性尊重プロジェクトのもとに初の事業を以下のとおり実践しました。カナダの製薬会社から寄贈された71万本の破傷風トクソイド・ワクチン剤が3-Hプロジェクトのもとに、フィリピンに空輸されました。このワクチン剤の寄贈はトロントのロータリアン、ケン・デービス氏のご高配によるもので、空輸はカナディアン・パシフィック航空会社が無料で手配してくださいました。
 このワクチン剤はロータリアンとフィリピンの保健省とが共同で実施する予防注射事業に使用されました。
 保健、飢餓追放、人間性尊重プログラムのもとに、当地区初の事業がインドとカルカッタで前述のフィリピンと時を同じくして実施されたのです。
 奈良西RCの松久保会員と大和郡山RCの大石会員の両氏がインドに旅行した際、カルカッタの観光資源大臣より、洪水のために住宅衣料など全部流出した数百万人の罹災者のいることを聞かされ、両氏は帰国後、奈良県下の全ロータリー会員に中古衣料品提出による協力を呼びかけました。その反響は大きく、清潔に洗濯した肌着類が数万枚持ち込まれました。現地への梱包輸送のため奈良県550余名の全会員1人当り1,000円を負担し、一部は船で送り、一部は急拠航空輸送とし、エアインディア会社が10カートンの送料約130万円を無料奉仕して戴きました。大石会員は、これをたずさえて空路カルカッタにとび、西ベンガル州政府総理大臣ジョピーバス氏と会談し、ロータリー75周年記念事業の趣旨を説明した後、贈呈式を行ないました。

ガバナーのプロフィール
アイディアに富み実行力のある人
植田喜三郎

 困難なこと、難しいことに当面したとき、一層闘志を燃やす人である。それは、旧制松本高校、京都大学を通じ勉学に励むと共にスポーツに打ち込んで鍛えた頑強な体力、旺盛な気力の賜物だろう。
 戦後は経済同友会で、各地の大会やセミナーに率先して出席、代表幹事となり内外の新知識習得の外に、得難い、友人が随所に生まれました。
 奈良RCに入会したのも、創立間もないころで、業界のリーダーはもとより、クラブ内外の多くの要職を見事に果たしてきました。このたびのガバナーを引き受けるに当たっては、今日までの一切の公職を辞退し新任に賭ける決意の程が伺えるのであります。
 戦後間もなく県の貿易視察団の一員として中近東を訪問、欧米を廻って帰国した杉山さんが同じ人間として、この世に生をうけながら、中近東諸国の人々の貧しい生活の実態を声をつまらせながら報告されたときの感動は「人間杉山」が躍如として、いつまでも印象に深く残っています。
 杉山さんが、入会当初から緒方準一、故小田成就両パストガバナーに私淑、大きな人間的感化をうけてきたように思われます。何事にも熱心で人一倍努力する杉山さんは、未だ蚊帳の最盛期に出始めたばかりの洋ふとんに着目、新製品の開発に徹して、ついに我が国の羊毛ふとんのパイオニアとして、寝具業界に革命を起こしたのであります。