1979-'80 Let Service Light the Way
地区ガバナー 久津見 専
President ROTARY INTERNATIONAL James L. Bomer, Jr.
◆ “奉仕の灯で道を照らそう”
ボーマー会長の言葉をつぎに掲げます。
75年にわたり、ロータリアンは「炬火の持ち手」となって多くの国々の多くの人々のために、よりよき生活への道を照らしてまいりました。オリンピックの走者のように、われわれは、前の走者たちからたいまつを受け継いで来ました。それは偏狭、無知、病気、飢餓など人間社会の暗い面に光をもたらす奉仕のたいまつであります。
ロータリーの奉仕のたいまつは、1905年にともされました。以来、それは次々と受け継がれ、現在では、世界中18,000の地域社会の85万人におよぶロータリアンの手に掲げられております。
ロータリーの視界は絶えず広がりつつあります。所の如何を問わず、そこにいる人々の生活に、奉仕の光、友好と理解の光をもたらすための新しい道がわれわれの前に開けつつあります。われわれが、さらに大きな決意をもって平和のビジョンを一層強化する活動に乗り出そうとするときには、奉仕の灯で道を照らすようにしましょう。ロータリアンが、一人残らず、平和への同じ願いを表明している無数の人々と心をあわせて、すべての人間の尊厳を心から認め、人々が求めているものを考え、そうした問題に配慮しましょう。ロータリーが人々の求めているものに関心をもち――そして行動することを皆に知らせましょう。
われわれには伝統があります。われわれには責務があります。われわれには開かれた道があります。いまこそ、世界友好の精神をもって前進しようではありませんか……、奉仕の灯で道を照らそうではありませんか。
◆ 就任のごあいさつ
新RI会長ジェームス・ボーマーさんのLet Service Light the Way――奉仕の灯で道を照らそう――のテーマにつきましては、6月22日の地区協議会において伝達説明申し上げました。要はポール・ハリスさんの掲げた奉仕の炬火を受けついで、今日の誠に巨大な――152カ国、18,000クラブ、85万人のロータリアン――組織にまで発展してきたことに大きな意義を見いだすものであり、さらにこの75周年を出発点として今後100周年を目指して奉仕の炬火を掲げ積極的に、かつ果敢に勇気をもって実践にとりくんでほしいと思います。
そして光には天然の太陽および人工的電灯とありますが、第3の人の心の中の光、これこそ人間の尊厳を尊重し仲間に対する愛情であり、我々を呑み込もうとする暗闇、即ち偏狭、誤解、嫌悪、偏見及び戦争を追い払ってくれるものであるから、一人でも多くの人々に、職場に、地域に、そして広く世界にこの奉仕の光をあててほしいと、その実践を強調されたのであります。
私はロータリーの基本はこの職業奉仕にあると思います。結果的に「四つのテスト」も生きてくることになりましょう。道徳水準を高め、自己利益第一主義を改め、自己の周囲に或は社会に対し尽くすべきでありましょう。
しかし、自己を犠牲にせよとは申しておらず、超我は必要でありますが、自己利益の欲望をよく調和さすべく頑張って努力すべきといわれておりますので、単なる精神主義、理想主義ではなく現実生活に立脚した合理主義であり、それでこそ実践可能となるわけであります。まず奉仕せよ、されば何時とはなく自然に報われるものであり、報われることを予期し、期待して奉仕すべきものではないということであります。易経に「積善の家には必ず余慶あり、積不善の家には必ず余殃あり」、また初期ロータリアンであるアーサー・フレデリック・シェルドンの「最もよくサービスをなすものは最も多くを利益する」と何れも洋の東西を問わずこうした名言がありますが、ロータリアンこそこの言葉をモットーとして学び、かつ実行すべきでありましょう。以上の精神を体して私が強調いたしたいことは、内部にあっては親睦、外部に対しては実践でありまして、親睦、和につきましては最も大切なことはお互いに我を押さえることであり、実践にあたっては役に立つではなく、役に立てるとは感謝の気持の現われであり、感謝とは人々の善意に対する見返りの気持でありましょう。
どうかみなさんがた、先ず私を含めましてロータリアンはこの地域の、日本の、世界の人々の善意に対する見返りの気持でお役に立てる奉仕をしたいものと思います。
そこで私はボーマー会長の迫力あるテーマの実践にあたって財団の推進、親睦、和の強化、会員増強及び拡大について皆さん方に一層のご協力をお願いすると共に、75周年記念基金の完納、及び記念事業である3-Hプログラムの遂行のため、地区レベルではUNICEFミルクのための醵金、及びクラブレベルでは特に、“奉仕の灯を青少年に”を掲げてその健全育成、非行化防止、あるいは施設奉仕等に皆さん方の衆知とその実践をお願いする次第であります。
◆ 地区大会
大会は4月19日午前11時より福井市文化会館、福井市市民福祉会館において、久津見ガバナー主宰のもと、RI会長代理杉谷武雄ご夫妻、元RI理事原田秀雄氏ご夫妻、渡辺GNご夫妻並びに中川福井県知事、大武福井市長等多数のご来賓と招待者をお迎えし、地区内外71クラブのロータリアンとその家族あわせて2,140名が参加して華々しくなごやかに開催されました。
本大会において、RI会長代理杉谷氏のRI会長のメッセージ及びシカゴにおける規定審議会の議案3件についての詳しい説明はよく理解をもたらし、日本ユニセフへの醵金贈呈(7,401,631円)は国際児童年にふさわしい業績として国際児童に対し関心度を高め、大本山永平寺貫首秦慧玉禅師の「生活の中の禅」ロータリー奉仕への参加、思いやりが禅と深い関わりがあることをわかりやすく話され、松下電器産業株式会社顧問高橋荒太郎氏の「事業経営と人づくり」の数々の妙訓、また杉山直前ガバナーをリーダーとするパネル討論会「ロータリアンとして省エネルギーに如何に対処すべきか」はパネラー各氏の日常省エネ運動に参加敢行されている態度が滲み出て、本大会を完全に燃焼しつくした感じすらあり、極めて有意義でありました。
◆ James L. Bomar Jr. RI会長夫妻を迎えて
アジア地区大会を終えて来日されたボーマー会長夫妻一行は9月25日に京都に到着、駅頭には絹川PG、山口PG夫妻、小谷京都RC会長の皆さんが出迎え、私はボカ・ラトーンでお会いしてからの堅い握手をかわしました。
会長にはRI理事Herbert G. Brown夫妻、元理事Charles O. keller夫妻、理事向笠広次夫妻、元理事原田秀雄夫妻、東京RC会員玉村文夫氏の皆さんが同行され、一行はグランドホテルで開かれた京都市関係クラブ会長との懇談会に出席されました。
懇談会では、先ずガバナーより8月31日現在の地区の概況を説明しあわせて2、3のアドバイスをお願い致しました。ボーマー会長より年間活動、財団推進については大変な称賛を頂き、
@3-Hプログラムの意義を認識して基金完納への協力依頼
Aフィリピンで行われる小児マヒのワクチン投与開始の式に出席するのを機会に、これは保健に対するRI第1の事業開始であるので、その支持をお願いしたい。
B各クラブ内で2名のポール・ハリス賞を選定してほしい。特に内1名はロータリアン以外の人で純粋な奉仕活動を行っている人がほしいと述べられました。
またガバナーが不活発なクラブに対するアドバイスをお願いしたのに対して、強く活発なクラブの第一条件はクラブの会長にある。第2は会員の奉仕活動は、クラブがチームとして動くときにその効果が最もよく現われる。世界で極めて小さいクラブでも素晴らしい成績をあげている。第3はガバナーが絶えず激励することだと述べられました。終わって修学院を見学され、午後4時半大阪ロイヤルホテルにおけるホスト第266地区伊瀬ガバナー、及び260、261、263、265、267、268地区各ガバナー共催の歓迎懇談会に臨まれました。
◆ ふれあい、この一年
ロータリーの心
年月の過ぎるのは早いもので、ガバナーをつとめた時より早や20年を経てしまった。1980年は、ポール・ハリスが同志3人と共に相寄り、語り合ったのが1905年2月23日で、爾来、ロータリーの炬火は相継がれて3/4世紀、創立75周年に当たる。この記念すべき年に地区ガバナーを担当させられたことを、この上もない幸運と喜んだのである。しかし、一番頼らなければならない人(一番頼りの妻)が心疾患で倒れ、当時未だ難手術といわれた大動脈弁置換手術を受けて療養中であり、ボカ・ラトーンの教育も、地区の諸行事も独りで出かけ、病床より愛の励ましによって無事ガバナーの仕事を完遂することができた。
そして、翌々年3月にまとめたのが「ふれあい、この一年」である。従って59のクラブの文庫にはこの一冊が保管されていると思うので、それをご覧いただければ、私のガバナーとしての考え方、各クラブへの要望その他は御理解願えるものと思うので改めての感想は省かせて頂くことにしたい。只少し不衍するならば発刊のことばにあるが如く、龍樹という人の書いた大智度論(これは般若経の注釈書)の中にある“智目行足以到清涼池”という言葉がロータリー真髄にあたるのではないかと今も思うのである。智目とは智慧の眼、即ち正しい理論であり、行足とは実行、実践である。つまり正しい理論と実践とが相まって、理想境に達するという意味で、ロータリーの理論だけ識り、論ずるだけでは、独りよがり、自己満足という事だけになり、又実践だけでは、所謂寄付団体と化し世人の顰蹙を買うことになるので、正しい理論と奉仕活動(四大奉仕)を積極的に行うことにより真のロータリアンと言えるという事である。俗に云うロタキチでは駄目であり、唯お金だけ出す奉仕では金持の域を出ない事になる。
これがロータリー
爰で私のガバナー時に感激した実例を挙げることにしたい。その一、1980年は降雪が多く殊に福井県の大野地方は山岳の盆地であるせいか積雪が多く2月23日会館の外は屋根降ろしの雪もあって丈余の雪の壁。今と違ってホールは暖房の設備なく、而電灯も薄暗く誠に居心地の悪いホールであったがクラブ会員ご夫妻達とR.A.会員全員が相寄って左程おいしくもない箱弁当をつつきながらの談笑風景、これが2月23日夜の75周年例会であった。私は身の寒さも忘れて「ア、これが本当のロータリーだナア」と心の中で叫びながら、いな咽びながら冷えた食事を口にし、75年前、ポール・ハリスが3人と語り合ったあの夕べを想起した。これで私の大野のRCのレポートの評価は一ぺんに上がったと思う。
今一つは、同年ロータリーの友11月の「ガバナーの頁」に記載した「使節団長の奇禍」であり、当時全国紙上にも取りあげられた。地区八日市RCと姉妹締結の為来日した米国ミシガン州マークエットRCの使節団長北ミシガン大学心理学教授デュアフエルト氏(44才)が、帰国後の写真コンテスト資料にと近くの農場で女子大生運転のトラクターによるトーモロコシ刈取作業をカメラにおさめるべく奥様を車に残した儘自分だけ近か寄った所、水平丸鋸で一瞬にして両足首を切断して了った。傷口は挫傷がひどい為、病院では完全な切断手術を余儀なくされた。斯る大きな奇禍により大変な事になったが、団長は自分が不注意だったからと、又ルイーズ夫人は極めて冷静、沈着に対処して頂いた為クラブ全員感激した事であった。尚一向は団長夫妻を遺して帰米されたが、夫妻は愚痴一つこぼさず、「私の受けた奇禍により両クラブ今後の交流親善に支障があってはならず、来年皆さん方がシカゴの大会に来られる時は義足をつけてお迎えしましょう」との誠に崇高な尊い心に深い感動を覚えた。之が日本の夫妻だったらどうだっただろうかと聊が心恥ずかしい思いがしたものであった。そしてこれがロータリーの言う真の親睦だろうと思う。
◆◆ ガバナーのプロフィール
鋭い観察力と厳しい行動力と
吉田順一
久津見さんの鋭い理論とその行動は他の追随を許さないものがあり、これも久津見さんの生い立ちそして医学者としての厳しい生活態度から生まれてきたものであろう。神官の家に生まれ育ち厳しい奉仕の躾を身につけ、長じては慈恵医大卒業とともに直ちに東京帝国大学伝染病研究所に勤務し、長年の研究生活により科学者としての緻密な考え方、行動はここにおいて培われ、彼の人となりとなっていったのであろう。
昭和23年、現住所において久津見内科病院を開設するに至って地域住民に医療を通じて奉仕することにより人間的にも磨かれ、乞われて福井市医師会長、福井県医師会長を務めることによって、久津見さんの優れた手腕は全ての人が認めるところとなった。
一面人柄は誠に善良でありやさしい温厚な人である。家族会には舞台に上がり詩吟を吟じ、また安来節を踊る人でもある。
昨年ガバナーノミニー受諾の折は家庭的にご夫人は心臓疾患の根治手術を受けられる時であり、心身ともに困憊の様子もみられたが、現今ではご夫人もようやく快復され、またお子様達はそれぞれ独立されている。ご家庭の不安もなくなりガバナーとしてロータリー活動に精進できることはわれわれ会員としてもまことに慶賀の至りと祝福申し上げている。