1980-'81 Take Time to Serve
地区ガバナー 渡邉彌蔵
President ROTARY INTERNATIONAL Rolf J. Klärich
◆ “時間を捧げよう 奉仕のために”
私が、ガバナーノミニーに指名されたのは1979年で、それまでは京都、奈良、大津、福井の各府県庁所在地の都市から選出されており、それ以外の所から選出されたのは私が初であった。それだけに緊張もあり、ある責任感を持って就任した。
当時の日本は24地区、研修地はアメリカはフロリダ州のボカ・ラトーンだ。その年の世界大会はシカゴであり、参加総数18,743名のうち日本人は2,645名の出席であった。RI会長のクラーリッヒ氏は片足が義足で対露戦争で負傷されたと聞く。温厚な親しみ易い人柄の方であった。
◆ 公式訪問と地区大会
いよいよガバナーに就任し公式訪問が始まったが、当地区のクラブ数は60クラブであった。
当時の一般の人々のRotaryを見る眼は、金持ちの昼食会という認識の人が多かった。
私はRotary Clubはその地域に密着したものでなければならない、そのために土地の歴史を知らなければならないと、公式訪問のときを利用して、歴史、土地柄など実地にご案内いただいた。そしてその土地に相応したクラブになることを力説した。
また、Rotaryの精神は、ある意味でキリスト教の愛であり、仏教の慈悲であり、儒教の仁であると、東洋的で日本人的な解釈を説いた。それが地方都市では共感を得たように思う。
そして各クラブの会長と個人的友情を深めるため鳩居堂で和紙の署名帳を求め、公式訪問の時座右の銘と署名をいただいた。第1部をパストガバナーの皆様方の署名、第2部を会長の部、第3部を地区幹事の部にし、鳩居堂で複製し全員に配布した。それが我々の友情を実に深めることとなり、今でも年一回同期の会長、幹事会を持ち回りで開いている。
なお、ガバナー事務所の経費の節約を第一に、舞鶴信用金庫の本店の三部屋を家賃月5万円で借り、昼食はカレーライス、コーヒーはインスタントにし、地区幹事も幹事以下10名で通した。
地区大会は、ホスト舞鶴クラブ、コホスト舞鶴東クラブで務め、会員及び夫人総出で助けていただいた。海上自衛隊のご好意で艦艇8隻(佐世保より2隻)、飛行機10機(岩国より)参加、ロータリアン3,000人が乗艦し、日本海で観艦式が出来たことはなつかしい思い出である。
在任中、「ガバナー閻魔帳」と名付けたノートをつけた公式訪問で感じたことを纏めて全員に配布した。すでに20年前の記録だが、多岐にわたって今にも通じるようなので、ここに数点を掲載することにした。
「ガバナー閻魔帳」――公式訪問の素晴しい収穫
*会員が輪番制で食事のプロデューサー
食事は輪番制と聞いて、何軒かの料理屋さんが、順番に例会の食事を届けられるシステムかと思ったら、そうではないのです。
このクラブでは、会員が一人づつ順番に例会食事の責任者となられます。責任者となった会員は、自分の思い通りの食事を作ってよいのです。具体的には、一食1,100円の予算の中で、料理屋さんへ自分の考えを言って、その通りのお弁当を作ってもらいます。例えば、終戦記念日が来れば、ご年配の会員諸氏と昔を偲ぶ為に、芋の茎や豆の入ったご飯をつけるなど、色々考えて楽しい? 食事を演出するわけです。
当番の会員は、このことによってクラブへの参加意識を高め、会員は例会の食事が楽しくて、いそいそと出席される。一石二鳥とは正にこのことです。
*出席率向上に頭をしぼる
出席率を向上させるために色々な手が打たれています。
1 皆出席者は半期ごとにその名前を発表し、記念品を贈る
2 出席をうながす標語を週報その他に掲載する。
3 例会場に出席状況を掲示する。
4 例会欠席の会員には電話をして、メイクアップの模様を聞く。
5 前年度各種行事の出席率を発表する。
6 市内全クラブの出席率を月報に載せる。
7 市内全クラブの例会場一覧表を携帯用会員名簿に掲載して、メイクアップを促す。
等々です。
*我が社紹介を週報に
100名を抱えるこのクラブでは、新入会員との馴染みが薄いのが一つの悩みとなっています。そこで、新入会員や、入会して日の浅い会員をピックアップして、我が社紹介の短文を週報に掲載することにしました。ニューフェイスのプロフィール紹介です。評判がいいようです。
*親しみやすい週報
ここの週報には、必要事項のほか、先ず、
1 会員の趣味、嗜好、あるいは思い出すままといった随筆が載せられて、非常に面白い読み物になっています。会員氏名のアルファベットの逆順に執筆の順番が廻ってくるそうです。
2 健康一口メモ すなわち健康保持または増進の方策、病気の平易な正しい解説などが毎週載せられて、注意を促します。会員のお医者さんと薬剤師さんが原稿を担当されるとか。
3 その他、ロータリー情報などなど。
例会ごとに楽しい週報が待っていてくれるのは、いいものです。
なお、暦欄を設けて「親鸞忌と霜月祭」「冬至と柚湯」など、身近な地方の季節の行事や有名俳人の名句を載せて変わった味を出しているクラブもあります。
* 完璧な記録保存
このクラブでは、創立25周年を迎えるに当り、記念誌の資料を揃えるために、3年前から記録の整備にかかって、完成されると共に、今後のために完全な記録保存の方法を作られました。
眼目は1m×70cmの厚紙の用紙作成です。この用紙に1年分の例会日の桝を作り、この桝の中にその日の例会の記録、委員活動など主要事項を記録、写真等の索引番号などを書き込みます。詳細な記録、写真等は別ファイルに整理して、何時でも鳥出せるようにされました。
30周年の記念誌は、労せずして立派なものが出来るに違いありません。
* 奉仕の手帳を配付
社会奉仕委員会によって、全員に「奉仕の手帳」という小さい手帳が配られます。会員は、どんな些細なことでも、自分の実践した善意の行動をこの手帳に記録します。外人に道を尋ねられたので教えた、風に倒れた看板を起こした、なども残らず記入するわけです。
月に一度、社会奉仕委員会がこれを回収して、各々の善行を検討し、例会で発表して奉仕への意思を高め合います。
* 小鳥の巣箱作り
継続事業として、小鳥の巣箱かけに情熱を傾けておられるクラブがあります。まず、愛鳥週間などに、市内の小学校などに材料を提供して、巣箱作りが始まります。入り口の穴の決定は、外敵の侵入、鳥の種類などによって非常に難しく、市の技術者の指導を受けます。
出来上がった巣箱の取り付けには、会員は弁当持ちで参加し、市の林務課の指導の下に、子供たちと一緒に汗をながします。取り付けた巣箱のその後の継続観察も、奉仕活動の一つです。
この活動は、地域において非常に高く評価されております。
* 留学生、米山奨学生、交換学生と交流
テリトリー内の大学には、留学生や米山奨学生が勉強し、高校には交換学生も在学しています。そこで、
1 留学生の日本語弁論大会
2 留学生を招いてランチョンパーティー
3 留学生と懇談会
4 米山奨学生のテーブル・スピーチ
5 交換学生のテーブル・スピーチ
などを積極的に行なって、彼らと交流を深め、クリスマスパーティには米山奨学生、交換学生を全員招いて、異国に学ぶ彼らを慰める等、色々と交際奉仕の実をあげておられます。
◆◆ガバナーのプロフィール
卓越した識見と実行力をもつ
行永 勲
第65地区の地方都市から初めてガバナーが出ることとなり、人格識見そなわり最適任者の渡邉君が選に入り宜なるかなと思った。
渡邉君は当地きっての素封家に生まれ、慶応大学を出て三井信託銀行に入り、その後の経歴は多方面にわたり、当地経済界の第一人者である。家業はセメント、建築材料、石油販売をはじめ広範囲にわたり、いずれも堅実経営である。
天衣無縫、性格は開け放しで卓越した識見と実行力を有し、多くの意見を取り入れて、慎重なる熟慮とともに事を決め、物事に筋を通し、一旦決めた以上はこれを貫徹する信念の人である。
舞鶴RCのキーマンで、チャーター・メンバーの一人であり、27年間、例会にはほとんど皆出席を通しており、ロータリーの真髄を身に付けていると言うことができる。ガバナーとして少壮有為の士であり、新しい角度からの指導力に大なる期待を有するものである。