1985-'86 You Are the Key
地区ガバナー 
増田房二
President ROTARY INTERNATIONAL Edward F. Cadman


 “あなたが鍵です”
 エドワード・F・カドマンRI会長は、このテーマについて次のように呼びかけている。
 ロータリーの基盤、その力、そのよさは、ひとりひとりのロータリアンです。ひとりひとりのロータリアンこそロータリーの奉仕と発展の鍵です。
 あなたが鍵です――ロータリー精神を分かち合える人々にあなたのクラブの扉を開いて下さい。
 あなたが鍵です――職業奉仕の扉を開いて下さい。
 あなたが鍵です――地域社会の扉を開いて下さい。
 あなたが鍵です――世界に扉を開いて下さい。

 重点目標と指導理念
 (1)青少年奉仕
  21世紀を託する青少年に、ロータリー精神を植えつける仕事は、今やらねばならぬし、国連が「国際青年年」を提唱するこの年にこそ、青少年をテーマにした奉仕活動を強調するにふさわしい年だと考えた。豊かな社会に生まれ育った青少年は、確かに幸せである。しかしその豊かさの中に自分を見失わないように警告しなければならない。
 他人のことには無関心で、自己の理想像を持たず、行きあたりばったりの利己心を生活原理とするような人間を、21世紀へ送り込むことになれば、それはわれわれの重大な責任である。青少年は今日のパートナーであり明日の主役である。青少年の模範たるべきわれわれロータリアンは、日常の個人生活、職業生活、社会生活の全てにおいて感謝すること、奉仕することを行動で示し、その行動に青少年を誘うことを要請した。
 (2)ロータリー財団への協力
  財団創設の功労者アーチ・クランフは、「ロータリー財団は、レンガや石の記念碑を建てるためのものではない。たとえ大理石に碑銘をきざんだとしても、やがてはくずれてしまうだろう。(中略)だが、心の中に碑銘をきざむなら、そしてロータリー精神と神をおそれ同胞を愛する気持ちをふきこむならば、われわれがきざんだものは永遠に輝き続け、文明のつづく限り、ロータリーを不滅のものにするだろう」といった。
 ロータリー財団が、自発的寄付の基礎の上に発展してきたことはいうまでもないが、1964-'65年度のRI理事会並びに財団管理委員会は、全ロータリアンを財団への寄付者にするということに意見が一致したと発表した。かくして財団がロータリーの国際奉仕の主力機関となるに至った経緯とその理念の周知をはかって、積極的で持続的協力を要請した。
 (3)米山奨学事業への支援
  東京RCは、日本ロータリー創始者米山梅吉翁が命がけで平和を冀求した生前の志を活かす記念事業として、本格的な国際奨学事業を始めるべく1952年に「米山基金」を創設した。これはロータリー財団の国際奨学事業に倣ったものであった。やがて国内全クラブの合同事業として受け継がれ、1967年に「財団法人ロータリー米山記念奨学会」に発展した。
 その基本理念には、第二次世界大戦に対する深い反省と、戦後の復興に寄せられた世界の友情に対する篤い感謝の心が込められている。世界各国から優秀な留学生を受け入れて、長期的で地道な努力によって、国際間の相互理解と世界平和に寄与しようと願う点で、ロータリー財団と精神を同じくするものであるから、日本のロータリアンは、米山奨学事業とロータリー財団の国際奨学事業は車の両輪をなすものと考えて、常にバランスを保って支援することを要請した。
 (4)会員増強と拡大
  会員の減少は組織の衰退に外ならないから、組織を活性化させるためには、毎年新会員を補充して新しい血液を導入し、特に老、壮、青のバランスを保って若返りをはかる必要がある。また会員の増強はクラブの財政基盤を強固にし、地域社会に密着した奉仕活動を、効果的な規模で実践するためにも不可欠の要件である。
  但し、各クラブは会員の増加が会員の質の低下につながらないようにするために、ロータリーの奉仕活動に確実に寄与してもらえると思われる真に適格な人物を迎え入れると共に、既存の会員自身もロータリアンとして恥ずかしくない自己研鑽に努めなければならない。それ故、会員増強の増は数の増加であるが、増強の強は質の強化であると主張した。

 目標に対する実践
 (1)青少年奉仕
  各クラブともに、青少年奉仕に力を入れて頂き多大の成果を挙げることができた。中でも、京都紫野RCの「留学生とともに考える日本文化の集いと留学生による美術工芸展」、福知山西南RCの「親子の喘息教育と喘息児サマーキャンプ」、並びに京都洛北RCの「中国帰国者を地域住民と共に激励するパーティー」は意義ある業績賞を得、勝山RCの「高校生を対象とした模擬面接及び講師の派遣」、大和郡山RCの「青少年のためのロータリー修練道場」、奈良大宮RCの「青少年の声を聴く集い」、京都南RCの「現代青少年問題を考える」、京都乙訓RCの「高校生トークイン―地球社会に生きる」、京都伏見RCの「フィリピン青年職業人招待」、亀岡RCの「留学生とロータリーアクトの語らい」はガバナー賞を受賞した。
  地区レベルでは例年通り5組に分けて開催したIGFでは、「青年と国際社会」を共通テーマとしてパネルディスカッションを実施した。また京都・奈良ブロックのRYLAは京都伏見RCのホストで京都市において、福井・滋賀ブロックのRYLAは小浜RCのホストで福井県小浜市において開催した。
 (2)ロータリー財団と米山奨学会への寄付
  ロータリー財団に対する寄付額は、従来の世界第1位から直前年度において第7位に転落したが、地区委員会の熱意と全会員の積極的協力のお陰で、当年度地区目標1人当り95ドルに対し84.75ドルの実績を挙げ、対前年比27.3%増であった。
  米山奨学会への寄付も総額1億786万8,741円、1人当り2万1,436円、ともに全国第1位を占め、日本独特のこの事業に対する当地区会会員の理解の深さを数字で示すことができた。
 (3)会員増加と拡大
  当年度の新会員増加は499名であったが、退会者が354名あったため、実質的増加は145名にとどまり、増加率が3%に及ばなかったことは残念であった。但し、京都伏見RCの努力により、京都洛南RCが創立され、新会員33名(期末現在)を得たことは嬉しかった。
  一方、ローターアクトでは、第256地区(群馬県、新潟県)の563名を抜いて580名となり、念願の地区別会員数日本一を達成できたし、インターアクトでは京都紫野RCの提唱によりヴィアトール学園洛星インターアクト・クラブが誕生して、青少年奉仕の重点目標にそえたのは幸いであった。

 世界社会奉仕――インドのアイキャンプ
 今から2500有余年前に、釈迦はインドのブッダガヤの地において悟りを開かれたと伝えられる。しかしながら、この偉大な宗教のルーツには今なお貧困と飢餓と病苦から救われることのない、おびただしい数の悲惨な人たちが住んでいる。職業上の体験からこの実情を知悉される大石恒義(大和郡山RC)地区世界社会奉仕委員長の情熱あふれる提案に感動し、3-Hプログラムの趣旨に沿う保健と人間性尊重の具体的奉仕活動として、ブッダガヤの医療奉仕アイキャンプを実施した。
 インドには白内障患者が数えきれない程多い。アイキャンプを伝え聞いて、遠くから歩いてきた患者が多かったし、中には35時間も列車に乗って、家族に連れてこられた患者もいた。協同事業参加のガヤロータリー・クラブ会員であり、第352地区PGのダニシ・プラサド氏から大石委員長宛の手紙には「私の人生に於いて知る限りでは、外国人の手によってかかる大きな奉仕をガヤにもたらされたことはかってありません」と書いてあった。当地区にとっても画期的なこの世界社会奉仕は、眼科医の世界的権威である財団法人臨床眼科研究所長、百瀬晧博士以下7名の医療チームの献身的なボランティア活動、ブッダガヤ日本寺の協力、そして特に当地区奉仕団20名の団長をお引き受け頂いた杉山PGご夫妻の力強く、しかもきめ細やかな心くばりのお陰と、地区会員各位の温かい拠出金並びに、当地区では始めてのロータリー財団同額補助金2万2,250ドルによる資金的裏付けにより、予期以上の成果を上げることができたが、それらを総合して、大石地区委員長の筆舌につくし難き命がけの苦労と超我の奉仕は、涙なくしては到底語ることができない。

ガバナーのプロフィール
さわやかに生きる
中川正文

 ひとには喜びもあれば、深い悲しみや苦しみというものがある。私たちはいつもそれらに振りまわされ、一喜一憂をあらわにする。ところが、増田さんは不思議なひとで、どんな思いがけない事態にであっても、たえず静かに微笑している。当事者でない私たちの方が「そんなことでいいのですか?」とハラハラするのだが、増田さんは一向かたちを崩さない。これではあわてふためいていた私たちの方が恥ずかしくなると同時に、泰然としている増田さんを見て安堵の思いを深くする。
 増田さんはクラブの会長はもとより、地区大会の委員長などを、みごとにつとめあげた人だが、「増田さんにさえついていけば間違いない」という信頼感――信仰にも似た安心感が、いつも私たちにあった。
 これは自らは語ろうとしないが、戦中戦後を通して今では想像もできない位の危機や困難に当面しながら、ひとつづつ乗り越えて解決してきた増田さんの歴史がもたらしたものであろう。その深い体験は一種の諦観と、自分にきびしく、ひとには篤い思いやりのある人間像をつくりあげたのではないかと思う。