1991-'92 Look beyond Yourself
地区ガバナー 西村大治郎
President ROTARY INTERNATIONAL Rajendra K. Saboo
◆ “自分を超えた眼を”
ラジェンドラ・K・サブーRI会長は、このテーマについて次のように解説している。
“私達たちが、自分の心の底を深く見つめる時、私たちは自分本位の考え方、行動という砦から抜け出して、自分を超えた世界に導く内なる力の存在に気がつくであろう。この内なる力によって人間は大いなる未見の空に高く羽ばたき、平和で恐れや飢えのない世界を夢見ることができるのだ。この夢を現実のものとすることこそ、ロータリーが目指すものである”と。
私たちの心の中にも“内なる力”がないわけではない。しかし、日常生活の流れの中で“内なる力”が力強い働きをもたらす機会を見失っているに過ぎない。世界中の人たちがすべて豊かさを享受しないかぎり、私たちのなすべき仕事は山積している。“自分を超えた眼”は今こそ必要である。
◆ 年間基本方針
ガバナーとして、とくにテーマを設けず、RIのテーマに忠実に従うこととした。RIのテーマ、“自分を超えた眼を”を何とかしてロータリアンにわかりやすく翻訳することに努めた。
たとえば、中世の世阿弥の花伝書にある“離見”という考え方を用いて、我見に陥りがちな私たちの心を転じて我執から自らを解放した広い心、温かい心、深い心で人生舞台を眺め直し、普段の生活に適用することだと説いた。
次に、近年のロータリーがともすれば量的拡大に走り、質的向上をおろそかにしている傾向を改めるためロータリー情報の徹底に力を注ぐように努めた。
さらに、私は近年のロータリーがともすれば外観体裁にばかり心を用い、枝葉末節にこだわり、内容の価値をおろそかにする誤りを指摘した。また、各種報告の場合ムダを省いて必要なことを簡明にのべるように指導した。
最後に、私は自身がともすれば理念的あるいは理論的なことに傾き、実践行動をおろそかにしがちであることを反省し、1年間に何か1つでも他の地区で成功していることをとり入れ、あるいは他の地区でもやっていないことでぜひ必要と望まれていることを実行したいものと考えた。
◆ 年間重点事項
その1 会員増強
国際協議会において年間10%の会員増強を行うように示されたので、その実現に向って努力したが、達成できなかった。とくに入会にあたっては職業分類表の改訂を8月中に行い、空いている職業分類を充填するようにすることとし、会員選考においてもあくまで厳正な基準によってこれを充たす候補者を求め、人格上問題のある対象はこれを排除するように指導した。女性会員の入会についてはクラブの自主性に委せた。
その2 広 報
ガバナー自身公式訪問で訪問したクラブの所在地の首長(知事・市長・町長)を表敬訪問し、ロータリーの理念及び業績について理解と協力をもとめるようにした。とくにポリオ・プラスの現地における写真を示して効果があった。
その3 地球環境保全
環境保全こそ現下の地球的課題であるので、職業奉仕、社会奉仕の両面にわたって、会員の啓蒙をはかり、地域の住民ぐるみのゴミゼロの運動や故紙はじめ空鑵空瓶など使用済み資源のリサイクリングなどを実行することとした。
◆ 交換学生の体験談をきいて
8月11日(日)京都パークホテルに於て国際ロータリー第2650地区北半球派遣・帰国青少年交換学生の歓送迎会に出席した。
私にとっては、青少年交換学生に接した最初の体験であり、あらためて青少年交換プログラムの重要性を感じた。時あたかも湾岸戦争の最中でもあって、日本に対する批判がきびしく、見知らぬ国で、言葉も充分できず、ときには冷たい待遇を受け、いじめられたりした経験談をききながら、その中で交換学生たちがいかに耐え忍び、相手の理解を得るために頑張ったかを聴いて――涙が出た。と同時に自分たちが受け入れる立場になったときは、もっと暖かく、親切にしてあげようと決心したという告白をきき、彼らの寛大な人間性に深い敬意をいだかざるをえなかった。
ロータリーによって派遣される多くの青少年は、ロータリーの派遣した親善大使という誇りと忍辱の勇猛心をもってその責任を果さなければならない。そのためには日本の歴史、政治、経済、文化について充分の知識と見識を身につけておくことが必要であることを忘れてはならない。
◆ “内なる国際化”について
今年のIMのテーマの中に“内なる国際化”を加えた。
この“内なる国際化”ということばは何をさすのか。私は国際化というものを海外へ出て行って、何かをするだけでなく、海外からやってくる人を受け入れるときに積極的にもてなすことであると考えている。
ロータリアンこそ外国人を自分と同じ人間であるという気持ちでもって親切に対応することのできる人達であると期待しているが、時には何かの理由をつけて逃げ腰となる人を見ることがある。外国語が話せなくとも、家の構造が和式であっても、外国人の訪問を歓迎する心さえあれば外国人は充分満足し、喜びを精一杯表現する。心の中に真の友好精神が充満することをロータリアンに期待したい。
◆ 職業奉仕の新展開についての誤解を解く
すでに1987-'88年度に、RI理事会は、職業奉仕に関する声明を採択していたが、これをめぐって職業奉仕はI serveなのか、We serveなのかがはっきりしないという意見が未だにくすぶっている。
職業奉仕に関する声明では、新たに職業奉仕は、ロータリー・クラブとクラブ会員両方の責務であると明言しており、いかにも今までの職業奉仕が自ら進んで喜んでする奉仕I serveに限定されていたものとは趣きを異にしている。
しかし、冷静に読めば判然とするように、職業奉仕はクラブとクラブ会員両方の責務と書かれており、文字通り両方の責務がある。クラブは会員の行う職業奉仕とは別にクラブ独自の計画をたて、行動することを奨励している。これは決して We serve が I serve に変わったのではなく、I serveをおろそかにしたものでもない。職業人としてロータリーの理想を自分の職場や業界に実現すること(I serve)は当然今まで通り行い、さらに加えて、クラブとして模擬面接など社会のニーズをみたす職業奉仕(We serve)も実行せよというわけである。
◆ ロータリー財団75周年に寄せて
“世界のために善いことを(Doing good in the world )”これは1917年6月18日1916-'17年度RI会長アーチ・クランフがジョージア州アトランタにおいて開かれた国際大会において、ロータリー基金の創設を呼びかけたときのことばである。かれはロータリー基金をつくって、全世界に慈善、教育、その他の社会奉仕の分野でなにか善いことをしようではないかと主張した。この提案は同大会で採択され、各地からは寄付金が寄せられたが、1928年のミネアポリス国際大会で、基金の名称をロータリー財団と改め、RIも財団を正式に認め定款・細則を改正した。
その後世界恐慌と第二次世界大戦の勃発によって最悪の危機に瀕したが、1947年1月ロータリーの創始者ポール・ハリスが逝去されると、全世界のロータリアンから続々と寄付金が集まり、1948年6月30日までに寄付金の総計は100万ドルに達し、はじめてアーチ・クランフの夢を実現する財源をもつことができるようになった。財団75周年にあたって、創始者のアーチ・クランフのことばを今一度問いただす必要がある。
◆ 一年を顧みて
外に冷戦構造解消があり、内にバブル崩壊がありのとんでもない年にガバナーの大役に就き、前半年は専ら公式訪問に励み、後半は周年事業や地区大会の準備と開催に骨身をけずり、結局は、1つの新クラブをつくらずじまい、会員増強も3.29%にとどまり、量的拡大については不本意な結末となった。
職業奉仕で評判がよかったのは、福井県下のクラブがやっておられる高校生に対する模擬面接であった。
社会奉仕では各地とも活発な活動が行なわれたが、今年とくに眼を惹いたのは、地球環境保全をめざした活動で、清掃運動から資源回収リサイクリング活動であった。
国際奉仕でもGSEをはじめとして交流親善活動が目立ち、内なる国際化の実践に自宅を開放された例も少なくなかった。
今年の意義ある業績賞は、委員会で検討した結果、日野川における「親子自然観察会」を水生生物、植物、野鳥の3つにわかれて行い、加えて「美しい自然を護るために」のテーマの下に小、中学生、高校生を対象とした作文を募集し、優秀なものを表彰された武生RCに対し贈られた。
◆◆ ガバナーのプロフィール
異彩を放つ老舗経営者
小谷隆一
「千切屋一門の祖西村与三右衛門が弘治年間に法衣業を始めて以来430年余の歴史を保つている」と聞けば、だれでも気の遠くなる思いがする。その老舗の13代目の当主である。
古いだけで賞賛されるのなら、京都には数えきれないほどの老舗が現存する。しかし西村社長は並はずれた異色の存在である。ひとことで言えばすぐれた読書家で文化人である。
京都経済同友会代表幹事のとき、いち早くドラッカーの経営学に傾倒され、私どもを指導して頂いた情熱は忘れることができない。
京都の基幹産業である京都織物卸商業組合の理事長を二十数年つとめ、京都商工会議所副会頭、府公安委員長などの要職を歴任、全日本きもの振興会や府観光連盟の会長などの公職も兼ねておられる。
多忙な身でありながら、家業を立派に発展させられた心の支えは、40年にわたるロータリアンとしての生活にあったと思われる。