1993-'94 Belive in What You Do, Do What You Belive in
地区ガバナー 
本田 茂
President ROTARY INTERNATIONAL Robert R. Barth


 “行動に信念を・信念は行動に”
 ロバート・バース会長は国際協議会で「ロータリアンよ信念を確立せよ、そして勇気をもって信念を貫く行動を起こせ」と熱っぽく訴えた。要するに理念を構築し肝のすわった行動を求めているのである。近頃のロータリーは巨大化した組織の維持管理に迫られ、ややもすれば運営面を重視する傾向にあり、理念の構築にあたいする精神面のフォローが少し足りない気がする。私は先ず自己価値の構築と奉仕の併行を推進すべきであると考えた。

 基本方針
 RI会長テーマの理解と推進を図るべく、PETS、地区協議会、そして公式訪問を通じて「もう一度ロータリーを見つめよう」と訴え、ガバナー月信にもサブタイトルとして記載した。バース会長の言われる、強い信念と行動がともなった地区になって欲しい、と念願したのである。一方地区委員会を通じまた公式訪問においても日常生活、ロータリー生活の区別なくいつもロータリーを傍において自然体で素直にかつ活発な行動を力説した。He Profits Most Who Serves Bestもそこから体得できるものと思ったからである。

 回 想
 地区委員会も活発な行動を展開した。冊子によるロータリー情報の推進、骨髄バンクを設立し大きな寄与をもたらした社会奉仕委員会、厳しい節度と礼節を要求したRYLA、ネパールに飛んで厳しい体験と奉仕に明けくれた1週間、若さと情熱の亀岡中央RCの創立とチャーターナイト、桜花爛漫の地区大会、ホストの京都洛北RCが「意義ある業績賞」に輝いたことなど、楽しい思い出は枚挙に暇がない。不肖な私に格別の友情とご支援を頂戴した皆様に心から感謝申し上げたい。

 ロータリーの道
 ロータリーに入会させて戴いて40年に近い。なにも知らなかった私は多くのことを学ばせて戴いた。もしロータリーに入っていなかったら? を考えると有難さがわかる。青年期にして壮・老を通じ無意識に学ばせて戴いたものは、はかり知れない。ロータリーは米の飯のようなものだと言われた先輩が居られるが、全くそのとおりだと思っている。

 最後に拙文「ロータリーの道」を記載いたします。ご参考の一端になれば幸甚に存じます。

 私達にとってロータリーとは一体どんな存在なのでしょう? 極く簡単に申し上げますと、好意と友情を深めつつ職業を通じて社会のお役にたち、世界を知り、人々と触れ合い、地球の大切さを知り、皆んなの幸せを求めつつ自己の価値を構築するための組織なのです。
 ロータリーの公式標語は次の二つです。「Service Above Self」(超我の奉仕)と「He Profits Most Who Serves Best」(最もよく奉仕する者は最も多く報いられる)。前者を第一標語、後者を第二標語と定めています。ではロータリーはいつどんな動機と趣旨で創設されたのか、かいつまんで記してみたいと思います。
 1905年2月23日といえば東洋では日露戦争が戦われ、日本では明治もすでに38年、そして3月10日は奉天の大会戦で勝利を収め、3ヶ月後の5月27日には日本海海戦でバルチック艦隊に大きなダメージを与え日本の勝利が決定的になったのでありますが、その年の2月23日の夜アメリカ合衆国シカゴのディアボーン街にあるユニティ・ビルに所在する鉱山技師ガスターバス・ローアの事務所に弁護士のポール・ハリス、仕立屋のハイラム・ショーレー及び石炭商のシルベスター・シールの4人が落ち合ったのです。
 その頃のシカゴは1871年の大火災の傷痕いまだ癒えず、さらに万国博覧会後の惨憺たる恐慌にうちひしがれ、“街には悪臭がみなぎり、シカゴ川は汚濁の塊りと化し、人々の心は荒れすさんでいた”と当時の文献は記述しております。そのような中でこの4人はいずれも故郷を遠く離れ、シカゴに出てきている互いに知り合わぬ「路傍の人」であったのですが、常に家郷を思い友情に飢えていたことと思います。この集いも最初はただ友情を深め互いの仕事を助け合おうというに過ぎなかったと考えられますが、ポール・ハリスは「職業人は必ず心からの友人になれる」、そして「我々は自分達だけでなく、他人の幸せも考えねばならない」と、熱心に説いたのでした。
 それから90年の歳月が経過した今日、159の国家と34の地域に、クラブ数29,113、会員総数は126,272名(1998年6月30日公式発表)に達する大きな国際組織に成長したのであります。子供に恵まれなかったポール・ハリスは「ロータリーは私の養子である」と言い続け、献身的な努力を惜しまなかったのですが、1947年1月27日、79歳でこの世を去りました。彼の生涯に幾度となく「ロータリーを初めて創ったとき今日のようなロータリーの姿を予想していたか?」の質問に対して、彼の回答は一貫して“NO”の一言でありました。国情も習慣も教育や所得水準も異なる185にも及ぶ国家と地域にすむ120万人の人々を一つの方向に目を向けさせ、善意と友情を基礎とした活動を展開させることは並大抵のことではありません。それらを形成する大きな力となっているのは理解と互助を通じ、新しい価値の構築を励行しようとする理念と行動にほかならなと私は思っています。
 これらに対する活動をロータリーでは総じて奉仕と呼んでいますが、元々ロータリーの奉仕の実行主体は会員個人に存在するとの考えが基本であります。先ず自己価値の構築を心掛け理念の確立に努めるべきでありましょう。ロータリーは創立以来90年の歳月に磨かれて価値を大きく積み上げて参りました。それはロータリアンの一人ひとりが自己価値の構築を通じて積み上げてきた結果の成果と申せましょう。90年に亘ってロータリアン達が価値の構築と奉仕を通じて、今日の国際ロータリーの基盤と心の財産を創り続けてきたのです。今後も社会の変遷を的確に捉え、新しい発想で対応し続けていかねばなりません。「世界は常に変化している。ロータリーはこの世界と共に変化してゆかねばならない。ロータリーの物語は幾度も書き換えられねばならない。」これはポール・ハリス晩年の述懐であります。「変化」これは「改革」と申し上げてよい場合も多いと思いますが、ロータリーは古き良きものを継承し、新しき良きものを造り出さねばなりませんが、先ず端緒の母体は個々のロータリアンであることを認識すべきであります。ロータリアン一人ひとりが受け止める変化・改革は自己価値構築の現象と捉え、対象は日常、職業、友情、更には知識・家族愛など生活を通じて枚挙に暇がありません。
 次いでロータリーの対応について、少し私の考えを記述してみたいと存じます。ロータリーは対応次第で大きなメリットを与えてくれますし、またさほどのこともない場合もあり得ることを先ず心に刻むべきでありましょう。仮にロータリアンを三つのタイプに大別してみましょう。
 (1)ロータリーを素直に見つめている、楽しくロータリーを過ごしながらも潜在しているロータリー価値を身近に引き寄せて吸収し、自己価値の構築に寄与させようとしているタイプ。
 (2)多くの友人に恵まれ親睦や趣味を通してロータリーを楽しく過ごしているが、ロータリーの奥にある何かをつかむのに今一歩の踏み込みが望まれるタイプ。
 (3)諸規則や出席規定が煩わしく、しかも多忙であまりロータリーに関わっている余裕がないと判断し、疎遠に陥りやすいタイプ。
 どのタイプも決して悪くないのですが、要は対応の問題です。折角与えられたチャンスに臨んで充実したロータリー生活を送って戴きたいと存じます。
 先ず(1)のタイプの方は、ロータリーを直視しつつ身近に引き寄せて自分なりのものにし、価値構築の手がかりの一つにしようと努めておられます。そのような対応は、無意識のうちに価値を積み上げられてゆくものなのです。永い年月に亘って積み上げられたロータリーの持つものは、見る目によってかなり豊富なものが潜在していると思われます。どうか貴方に報いてくれるものを、どんどん引き出す努力を継続して戴きたいと存じます。それでこそ「He Profits Most Who Serves Best」の標語が活きてくるというものです。
 (2)の方は「四つのテスト」の第3項「好意と友情深めるか」を実行しておられ、この点は申し分ないのですが、惜しむらくはロータリーの間口だけを捉え奥へ入っていくことを少しためらっておれれると思われます。確かに親睦はロータリーにとって欠かすことの出来ない大きな要素です。親睦なくせばロータリーの絆も活動も進捗致しません。しかし親睦はロータリーの最終目標ではないと存じます。いわば理念を確かめ行動のために継続して歩んでゆく道中とも云えます。今一歩積極的に奥深くお入り戴きたいと存じます。
 (3)のタイプの方は、現在自分の持っておられる考え方でロータリーを判断されているのではないでしょうか? 昨今の社会は目まぐるしく変遷致しますし、新鮮な発想や行動も常に要求されます。何でも見てやろう、吸収してやろうの気持を持続的に持つことが肝要です。勿論ロータリーが総じて亀鑑的であるとは申せません。しかし職業人の集まりであり、またとない異業種交流の場でもあります。蓄積された思考もある筈です。積極的に入ってゆけば得る処は必ずあると思います。それに時間の問題ですが、時間は造るものであると考えて戴けば如何でしょう。気ぜわしい対応が要求される昨今、時間は益々貴重なものとなって参ります。云ってみれば時間は全ての価値を生み出す原資なのです。時間を裁量し、充実した日常を送ることは価値構築の基礎と云えます。貴方の充実した時間の中に是非ロータリーを組み込んで戴きたいと思います。元々ロータリーは多忙は職業人をすぐって入会して戴くのです。多忙な方だからこそ活動的で一層に高度に付加された時間を持って頂けると確信するからなのです。一層の充実を追求するチャレンジ精神を期待して止みません。(後略)

ガバナーのプロフィール
しにせのだんなから……
川島春雄

京都御所の西、室町一条の角にのれんを下げたしにせにふさわしい店構えの本田味噌本店がある。
 本田茂君は、この7代目主人である。代々受け継いだ伝統の品はもちろん、時代の要請にもこたえる種々の味噌づくりも心がけている。
 しにせのだんならしく、温和、控えめではあるが、内に激しい闘志を秘め、社員の先頭に立って商売に励んでいる。若いころからスポーツ好きで、特に馬術は大学時代に京都インターカレッジ馬術大会で同志社の千宗室元RI理事と張り合い衆目を集めたという。
 本田君は私が千ガバナーの地区大会委員長を努めた時は大会幹事として、私がガバナーを努めた折には地区幹事長として助けてくれた。
 この度はガバナーの重責を負い、先頭に立ってロータリーの奉仕の実践に努めねばならぬことになったが、本田君は持ち前の真摯な気性と内に秘めた闘志により、遺憾なく実力を発揮することと期待する。