1995-'96 Act with Integrity. Serve with Love. Work for Peace.
地区ガバナー 坂部慶夫
President ROTARY INTERNATIONAL Hervert G. Brown
◆ “真心の行動・慈愛の奉仕・平和に挺身”
ガバナー時代の思い出を書くのだ。正直申してなかなか記憶に上がってこない。どうやらガバナーの任務は余り楽しいものではなかったか、むしろ厳しく、過激なものであったからかも知れない。しかしPGになってからもクラブの周年事業、地区大会、IMチューターナイト、その他、地区の会合などで、ガバナー現職時代に「良き出会い」があり、そこで培ったロータリーの友情をひしひしと感じることがある。それに何よりも、拙い私を支えてくれた京都洛中RCでのガバナー事務所の幹事長、幹事の諸君、幹事団以外の留守番役とも言うべき会員がクラブの活動を継続し発展させてくれたことに、心から感謝している。
◆ 国際協議会
国際協議会で「色々な点で優れた2650地区ではどうしているか?」との質問があり、先輩歴代ガバナーの実績を思い、その責務の重さに緊張を覚えたものであった。
ハーブ・ブラウン次期RI会長から「真心の行動」「慈愛の奉仕」「平和に挺身」の会長テーマが示され、強調事項として、ポリオ・プラスへの取り組み、増強・拡大への挑戦の実施を強く訴えられた。そして、「夢」を持つことの大切さ、その一歩をまず踏み出すことの必要性を強調された。
帰国後、私はブラウン会長の意を体してスピーチをすると共に、私の信念ともいうべき「ロータリーの原点に立つ」「あなた方は灯台です。愛の光りを」を本地区ガバナーのテーマとして掲げさせて戴いた。ローソクに光りを灯して机の下に置く人はいない。机の上に置いて周囲を照らすのである。私達ロータリアンも灯台の光のように、奉仕の光、愛の光を闇夜に照らすものになろうと訴えた覚えがある。
◆ ガバナー年度開始、公式訪問
'95年7月の新年度となり、まず、東京で行われたガバナー会に出席、錚々たるパスト・ガバナーたちの前で紹介され、緊張を覚えた。
帰京後、7月4日の京都山科RCをはじめとする88クラブの公式訪問が始まったのであった。それぞれのクラブで会長、幹事をはじめ、一般会員の温かい心に接することができた。PGになってから当時の会長から聞くところによると、相当細部にわたって厳しい質問もしたらしくて恐縮している。地域によって異なるが、年に数回のクラブ協議会をクラブの例会中に行うことが一般的になっているクラブがあり、福井県はその傾向が特に強いように思われた。これならフォーラム時間は充分でなくても出席率は良くなるはずである。
◆ RI会長の訪問
12月はじめにブラウンRI会長夫妻が、第1、第3ゾーンの研究に来られるという破格の事態が起こり、京都を訪問され、地区をあげての歓迎会が持たれて、関係各位に予期せぬご迷惑をかけてしまった。ゾーン研究会にその年度のRI会長が出席されるのは、世界150カ国のなかでも2、3の例を除いてはなく、いかに第2650地区を重要視しているかの証左であると千宗室元理事より教えて戴いた。
◆ 世界社会奉仕の実践
私のガバナー在任中忘れることのできない地区世界社会奉仕(WCS)としてフィリピンのパナイ島パンダン町における給水事業活動について触れておきたい。
小鳩地区世界社会奉仕委員長を通して、この問題に取り組んだのは、RI規定審議委員会で、世界で給水事業に取り組むことを決議したことの目的に適っていたこと、パナイ島は前世界大戦中には戦場になった所であること、水不足があり、井戸を掘っても塩水が混じるため、現地では高血圧、心臓病、肝臓病をはじめとする疾病が多いという。パンダン町から山側にある湧き水をポンプで上げてそこの水槽から、パイプラインで町に給水するという遠大な構想であった。
アジア協会がすでに援助を始めていたが、それに協力するという形で進められた。2月18日から約1週間、地区ロータリアン7名、地区ロータアクト5名がこれに取り組んだ。対日感情が未だ決して良いとはいえない所で、工事中にも、フィリピンの兵士が銃をもって警戒してくれるという状況の下であったが、地区としてはポンプ・アップのモーター二基と貯水タンクまでのパイプ引きを行った。西浦貴也君を始め4名の地区からのローターアクターが加わってくれたことは感謝である。
我が地区の74クラブから特別に寄付された100本分のパイプによりバンダンの途中にあるセント・ロザリオの町まで引かれたパイプの水道栓を現地の子供達と共にひねって最初の美味しい安全な水が吹き出したときの町の人々や我々関係者の歓声は忘れることができない。現地の古老が「日本人は戦争中、我々を殺しに来たが、今回は平和と友情を持ってきてくれた」と話してくれたときは、本当にこの事業に関わってよかったと感謝したことであった。
◆ 地区大会
3月にはRI会長代理に千宗室RI元理事が決定したが、このことは私達一同にとってはまことに幸いなことであった。
地区大会では、通常のプログラムの外に、国際理解と平和を主題として、ベルリンの壁崩壊後の東欧ロータリー・クラブ、ポーランドのワルシャワRC、クラコフRC会長、チェコのプラハRC、ブルノRC会長、それにハンガリーのブタベストRC会長並びに前会長の皆様方をパネリストに同志社大学の竹中正夫教授にコーディネートをお願いして、新生ロータリー・クラブの現状を危機、将来の親睦、理解それに何をなすべきかについて語り合った。これは画期的なプログラムであったと考えている。
大会2日目には出席者が例年、減少することから、一般公開シンポジウムを行った。主題は「今、話題の成人病」で、コーディネーターに京都府立医科大学元学長、名誉教授、佐野豊先生をお願いし、有意義なシンポジウムになった。
◆ ポリオ・プラスの実施
ぜひ書き綴っておきたいのは、モンゴルでのポリオ・ワクチン投与に関してである。ポリオ・プラスは国際協議会で指示された最重要事項の1つであったが、第2650地区ではそのための予算的処置はできていなかった。前年度の二橋ガバナーの年度には、地区世界社会奉仕の予算をカンボジアでのポリオ・プラス事業にあてられたが、私の年度にはそれが既にフィリピンでの給水事業に使われた。そこでできるだけ負担をかけずに寄付を集めるために、地区協議会で会長グループに、例会ごとに、ポリオのための障害児が出ないことを心に念じつつ、50円、100円を捧げてくださるように要請した。ポリオ・プラス特別委員会を急慮設置し、募金は思いに優る2,650万円余りの浄財が得られ、NIDS(国家一斉投与)に1,000万円を始め、WHO西太平洋地区に550万円、モンゴル国に対してポリオ・プラス対応用医療機器費として200万円、ロータリー財団にポリオ・プラス基金として250万円、ヨーロッパのポリオ・プラス支援金として200万円、その他ポリオ・プラス関連のためにも分割寄付が可能になり、感謝であった。モンゴル・ミッションが結成され、27名が5月に出発、NIDSに参加した。
◆ ベネファクター世界一
ロータリー財団への協力には、刮目すべきものがあった。本年度は、ベネファクターの増加に力を入れたので、通常の財団寄付はへったのではないかとの危惧があったようであるが、増加の結果となった。
財団は将来を見据えて、2005年までに2億ドルの寄付を達成し、その果実で国際奉仕することを目途としており、そのためにベネファクター増加を要請してきた。当地区は、'96年6月14日現在、614名の新規ベネファクターを獲得し、総人数は895名にも達した。これは全世界515地区の中でも、比較にならない最多記録で、500名以上のベネファクターを持つのは、当地区以外には世界でも2地区しかない記録である。
◆ ガバナー事務所分室設置
外国との交流に莫大な量の通信事務、派遣学生の研修、受け入れ学生の対応、それらに伴う莫大な記録、資料の保管等で切実な問題を抱えている国際青少年交換委員会のために、諮問委員会のご理解、関係各位のご好意により、京都商工会議所内にガバナー事務所分室を開設することができた。
◆ 2004年の国際大会開催について
2004年に国際大会が大阪、関西(2640地区、2460地区、2680地区、2650地区)合同で開催される可能性が出たために、RIから視察に見え、国際大会が東京に次いで、久方ぶりで日本でそれも大阪、関西地区で開催されることになった。
◆◆ ガバナーのプロフィール
愛と奉仕にあふれた人
土肥信一郎
坂部さんがガバナーに推挙されたのは、先生が優れた知性と識見の上に、深い奉仕の精神と豊かな国際感覚を備えられた素晴らしい紳士であるからである。私たちは先生の謙虚な、しかも熱い使命感に、もろ手を上げて賛成し誕生を喜び協力を誓った。
坂部さんは、若きころイリノイ大学教育病院留学中からシカゴRCのスピーチに招かれたり、ポール・P・ハリスの記念事務所を訪ねたり、また、千宗室RI元理事は小学校の同級生、堀場雅夫PGは同窓であるなど、ロータリーとの因縁は深い。京都洛RCでの会長やガバナー特別代表で示された手腕は判断力、決断力、実行力ともに抜群で、クラブの重鎮でもある。
現在は坂部医院の院長。京都府立医科大学関係や京都YMCAの理事ほか幾多の公職で超多忙であるが、ご長男が後継者として立派に成長されていることは、ロータリーにとって誠に幸いなことである。